50代になってから「以前より顔全体が下がってきた」「ほうれい線が目立ってきた」「目元がくぼんで疲れて見える」と感じることはありませんか?
ほうれい線やマリオネットライン(口角から顎に伸びるたるみジワ)が気になり、その部分だけをヒアルロン酸で埋めようと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、気になる線の裏側で顔全体のボリュームが失われ、頬や輪郭全体が下がっていることが、たるみを目立たせている場合があります。
ヒアルロン酸は本数が多ければ良いというものではなく、必要な部位へ適切に注入することが重要です。
今回は、顔全体のたるみにお悩みだった50代女性に対し、4~5本程度のヒアルロン酸を複数部位へ注入した症例をもとに、形成外科専門医の視点から「なぜその本数が必要だったのか」「なぜその部位を選んだのか」を解説します。
50代のヒアルロン酸は何本必要?
「50代ならヒアルロン酸は何本必要ですか?」という質問をよくいただきます。
結論からいうと、必要な本数は年齢だけで一律に決まるわけではありません。
50代の肌や顔立ちの変化は、単純な「シワ」だけが原因ではなく、いくつかの要因が重なって現れます。
代表的なのが、次の3つです。
- 皮下脂肪や頬のボリュームロス(加齢による脂肪や組織量の減少・顔面骨の吸収)
- リガメント(皮膚や脂肪組織を骨に固定している、靭帯のような組織)の支持力低下
- 皮膚や脂肪組織そのものの下垂
これらが複合的に起こることで、頬や口元の組織が下方向へ引っ張られ、ほうれい線やマリオネットラインが目立ちやすくなります。
ヒアルロン酸治療では、こうした背景をふまえて必要量を検討します。
顔全体を整える場合、目安となる使用量は次の通りです(たとえば30代なら、0を取った数字「3」が目安の本数、というイメージで覚えるとわかりやすいでしょう)。
| 年代 | 目安使用量 |
|---|
| 30代 | 2〜4cc程度 |
| 40代 | 3〜4cc程度 |
| 50代 | 4〜6cc程度 |
| 60代 | 5〜8cc程度 |
これはあくまで一般的な目安にすぎません。
ほうれい線やマリオネットラインなど、気になる部分だけを軽く整えたいなら、1?2本程度で改善を目指せるケースもあるでしょう。
一方、複数の部位にボリュームロスや下垂がある場合など、顔全体を整えたい場合は、4?6cc程度が必要になることもあります。
「50代だから必ず4?5本必要」というわけではなく、顔面、骨格、ボリュームロスの程度、リガメントのゆるみ、治療を希望する範囲、過去の治療歴などを診察したうえで、顔全体の支持構造を確認しながら、必要な部位へ必要な量を検討します。
今回の症例|顔全体のたるみがお悩みの50代女性
今回ご紹介するのは「顔全体が下がってきた」と感じてご来院された50代女性の症例です。
上まぶたのくぼみや目の下のくぼみも気になっており、これらを含めた顔全体の印象を整えたいというご希望がありました。
これまでに他院で脂肪注入、下眼瞼脱脂(目の下のたるみ取り)、糸リフトの治療歴があり、糸リフトについては施術後しばらくは変化を感じていたものの、半年ほど経過した頃には効果が分かりにくくなったと感じ、今回改めて別の治療方法を検討されていました。
診察を行ったところ、顔全体のボリュームロスと組織の下垂が見られ、その影響でほうれい線やマリオネットライン、フェイスラインに影が生じ、実際の状態以上にたるみが目立って見えている状態でした。
加えて、右側のゴルゴライン(目の下から頬にかけて見られる溝状のくぼみ)が目立ち、右眼窩脂肪(目の周りにある脂肪組織)が残存していること、上まぶたの陥凹(くぼみ)と皮膚のゆるみも確認され、複数の加齢変化が重なっていました。
そこで今回は、気になる部分だけをピンポイントで治療するのではなく、顔全体のバランスを考慮したうえで、4?5本程度のヒアルロン酸を用いる治療をご提案しました。
診察で分かったたるみの原因
ここでは、たるみの原因について詳しく解説します。
顔全体のボリュームロスがたるみを強調していた
診察の結果、今回の症例で目立っていたほうれい線やマリオネットライン、フェイスラインの影は、その部分だけの問題ではないことがわかりました。
背景にあったのは、顔全体で起きていた次の3つの変化です。
- ボリュームロス(頬やこめかみなど、脂肪や組織量や顔面骨が加齢とともに減っていくこと)
- リガメントの支持力低下(皮膚や脂肪組織を骨に固定している靭帯のような組織が、加齢によってゆるんでくること)
- 組織の下垂(支えを失った皮膚や脂肪が、重力で下方向へ引っ張られること)
この3つが同時に進行すると、頬の脂肪がこめかみ側から口元側へと移動しやすくなり、本来あるべき位置のボリュームが失われます。
すると、その周辺に影ができ、ほうれい線やマリオネットライン、フェイスラインのたるみが、実際の状態以上にくっきりと目立って見えてしまうのです。
つまり、線そのものが深くなったというより、周囲のボリューム不足が影を生み、線を強調していたと考えられます。
気になる線だけ治療しても改善しにくい理由
ほうれい線やマリオネットラインといった「線」の部分だけに、ヒアルロン酸を注入する方法もあります。
この方法では、溝を直接埋めるため、一時的に線が目立ちにくくなることはあるでしょう。
しかし、その奥にある根本的な原因、つまりボリュームロスや組織の下垂そのものは変わっていません。
土台がゆるんだままの状態で、表面の溝だけを埋めても、周囲との高さのバランスが崩れ、不自然な印象になりやすいという難点もあります。
さらに、下垂の力は変わらず働き続けているため、時間の経過とともに再び影が目立ってくる可能性も考えられます。
今回のケースでは、こうした理由から、線の周囲だけでなく顔全体を支える治療が必要と判断しました。
顔全体を診断して治療計画を立てる重要性
たるみやシワというと、つい気になる部位だけに目が行きがちです。
しかし本来大切なのは「なぜそこにたるみが生じているのか」という原因を見極めることです。
原因がボリュームロスにあるのか、リガメントのゆるみにあるのか、あるいはその両方が重なっているのかによって、注入すべき部位や量は変わってきます。
今回の症例でも、まず顔全体を診断したうえで、必要な部位へ必要な量を注入するという治療計画を立てました。
目先の線を埋めることだけを目的にせず、原因から逆算して治療方針を組み立てる。
この考え方が、自然な仕上がりにつながっていきます。
施術内容
今回の施術内容を以下にまとめました。
MDコードにもとづいた注入部位の設計
ヒアルロン酸を注入する際はブラジルのとても著名なDr. Mauricio de Maio(マウリシオ・デ・マイオ) が体系化した「MDコード」と呼ばれる注入部位の指標を参考にすることがあります。
MDコードとは、顔の部位をアルファベットと数字で分類した“顔の番地”のような考え方で、こめかみは「T」、頬骨まわりは「Ck」、下顎は「Jw」というように、部位ごとに注入するポイントが体系化されています。
この指標を用いることで、感覚だけに頼らず、狙った部位へ狙った量を再現性高く注入することができるのです。
使用製剤と注入部位
今回使用した製剤は以下の2点で、それぞれ注入した部位と量は以下の通りです。
井畑医師MEMO
施術後の変化
症例写真を確認すると、施術前と比べて印象の変化がうかがえます。
まず目を引くのは、こめかみから中顔面にかけてのボリュームです。
ここが補われたことで、頬の位置がやや高くなり、顔全体が自然に持ち上がったような印象になりました。
これに伴い、これまで気になっていたほうれい線やマリオネットラインの影も以前より目立ちにくくなっています。
フェイスラインにあったもたつきもすっきりとして見え、輪郭全体の印象が整ってきました。
さらに、こめかみや中顔面のボリュームを補ったことで、目の周りにできていた影が目立ちにくくなりました。
上まぶたのくぼみやゴルゴラインを含めた顔全体が、施術前よりも明るく見える印象です。
加えて、気になっていた顎部分のへこみも、目立ちにくくなっています。
顔の一部分だけでなく、こめかみから頬、フェイスラインまで全体のバランスを整えたこと。
それによって、これだけ多くの変化が一度に感じられる点が、今回の症例の大きなポイントといえるでしょう。
症例No.0086351
ヒアルロン酸リフト(ボリューマXC 4本・ボリフトXC 1本)の施術例
施術、料金、期間・回数、リスク(副作用)
| 施術 |
ヒアルロン酸で靭帯(リガメント)を補強し、たるみを改善してお顔をリフトアップする施術です。
また、気になるシワには直接ヒアルロン酸を注入し、ふっくらと持ち上げることで若々しい印象を与えます。 |
| 料金 |
302,500円(ジュビダームビスタ®ボリューマXC 4本・ジュビダームビスタ®ボリフトXC 1本) |
| 期間・回数 |
1回・40分ほど |
リスク (副作用) |
針を刺した部分や注入部分に赤みや腫れが、1~7日程度生じることがあります。 |
※注意事項:治療の結果には個人差があります。
※効果や変化の感じ方には個人差があります。上記はあくまで今回の症例における傾向であり、すべての方に同じ変化が得られることをお約束するものではありません。
まとめ
50代では、ボリュームロス、リガメントのゆるみ、組織の下垂など、複数の加齢変化が重なりやすい時期です。
顔全体を整えたい場合には、4?6cc程度のヒアルロン酸が必要になることもありますが、必要な本数は年齢だけで決まるものではなく、骨格、ボリュームロスの程度、リガメントの状態、過去の治療歴、治療を希望する範囲によって異なります。
今回の症例では、気になる線だけを埋めるのではなく、リガメント周辺や顔の土台を意識しながら複数の部位へ注入を行いました。
顔全体の支持力を補うことで、ほうれい線やマリオネットライン、フェイスラインの影が目立ちにくい、自然な印象を目指しています。
ヒアルロン酸のみで十分な変化が得られない場合には、糸リフトやHIFUを組み合わせるという選択肢もあります。
自己判断で本数や注入部位を決めるのではなく、顔全体の加齢変化を診察したうえで、ご自身に合った治療計画を立てることが大切です。
自分に必要なヒアルロン酸は何本?
ボリュームロス、リガメントのゆるみ、組織の下垂など、年代ごとのフェイスラインのお悩みなどは、解剖学を熟知した当クリニックの医師にご相談ください。患者様一人ひとりに適した治療をご提案します。
参考文献
こめかみ(T1)や下顎(Jw1)は、顔全体の輪郭を左右で支える土台となる部位です。
左右均等な量を注入することで、片側だけが不自然に張り出すことを避け、自然な立体感を目指しています。
頬骨まわり(Ck1・Ck3・Ck4)についても、頬のボリュームロスを補いながら、ほうれい線やマリオネットラインの影の原因となっている下垂そのものへアプローチしています。
このように、ほうれい線やマリオネットライン付近だけでなく、こめかみや頬、下顎、顎など顔全体を支える部位へ分散して注入している点が今回の治療のポイントです。