【医師監修】イソトレチノインの好転反応はいつからいつまで?
ニキビ治療で注目されている「イソトレチノイン」ですが、治療を始めた人の中には「悪化した」「ニキビが増えた」と感じる時期があります。
これは多くの場合、「好転反応」と呼ばれる一時的な現象です。
本記事では、イソトレチノインの好転反応が起きる理由・期間・症状・出やすい人の特徴・注意点を、国内外の皮膚科知見に基づいて解説します。
目次
好転反応とは?なぜイソトレチノインで起こるのか
「好転反応」とは、治療を始めた直後に一時的に症状が悪化するように見える現象です。
イソトレチノインの場合、服用を始めた直後に「新しいニキビが増えた」「赤みが強くなった」と感じることがあります。
皮膚科領域でのメカニズムは次の通りです。
①イソトレチノインは皮脂腺を縮小し皮脂分泌を抑制する作用があり、これにより毛穴内部の角栓や皮脂が一気に排出されやすくなる。
②その過程で、毛穴内部にたまっていた皮脂・炎症物質が表面化し、一時的にニキビが増えたように見える。
③ターンオーバーが促進され、古い角質が急に剥がれることで赤みや乾燥が出やすくなる。
このため、イソトレチノインの効果が「表面化」する最初の段階では、いわゆる初期悪化=好転反応として肌の変化が見られます。
ただし、すべての人に起こるわけではなく、出ない人も多い点は重要です。

好転反応の出やすい人とその確率
イソトレチノインによる「好転反応(初期悪化)」は、全員に起こるわけではありません。
皮膚科臨床では、およそ10〜30%程度の人に一時的な悪化が見られると報告されています。
この数字は、国内クリニックの実績や海外の文献でもおおむね一致しており、「5〜10人に1人、または3人に1人程度の割合」で起こると考えられています。
好転反応が出やすい人には、いくつかの特徴があります。
①炎症性ニキビが多い人
もともと毛穴の奥に皮脂や炎症がたまっていると、イソトレチノインの作用で皮脂腺が急速に収縮し、内部の皮脂や炎症物質が一気に押し出されるため、一時的にニキビが増えたように見えることがあります。
皮膚内部で「出口待ち」状態だった皮脂が急に排出されることが、好転反応の主因のひとつです。
②高用量で治療を開始した人
一般的な開始量は0.25〜0.5mg/kgですが、1.0mg/kg前後など比較的高い用量から始めると反応が強く出る傾向があります。
皮脂分泌が短期間で急激に減るため、皮膚が対応しきれず赤みや乾燥、炎症が強く出やすくなることも。
③敏感肌・乾燥肌の人
イソトレチノインは皮脂を減らすため、もともと乾燥傾向や敏感肌の人ではバリア機能の低下により炎症が増幅しやすい傾向があります。
「治療による乾燥+もともとのバリアの弱さ」が重なると、赤みやヒリヒリ感が強く出るケースも。
④スキンケアや生活習慣の影響
ピーリング剤やレチノール化粧品、スクラブなどを併用している場合、角質剥離作用が重なり、刺激が増して初期悪化が強まることがあります。
また、睡眠不足やストレス、糖質・脂質の多い食事も炎症を悪化させる要因になり得ます。
好転反応が出ない人もいるのはなぜ?
好転反応が出なかったからといって「薬が効いていない」わけではありません。
イソトレチノインの作用は、皮脂腺への影響・抗炎症効果などが複合的に働くため、肌の状態が安定して反応が穏やかに進んでいる人も多く存在します。
好転反応の症状は?
好転反応では、以下のような症状がよく見られます。
| 主な症状 | 原因・特徴 |
| 赤み・腫れ | 皮脂や炎症が表面化し、毛穴が詰まりやすくなる |
| ニキビの一時的な増加 | 毛包内の皮脂が一気に排出される |
| 小さな白ニキビの出現 | ターンオーバー促進で角栓が浮き上がる |
| 乾燥・皮むけ・ヒリヒリ感 | 皮脂分泌低下により肌バリアが一時的に不安定になる |
| 痒み・つっぱり感 | 乾燥や炎症による刺激反応 |
これらは一時的なものが多く、時間の経過とともに落ち着いていくケースが大半です。
ただし、痛み・強い腫れ・膿を伴う場合は感染や過度の炎症が疑われるため、自己判断せず医師に相談してください。
好転反応はいつからいつまで?好転反応の期間と経過
イソトレチノイン治療で最も多い不安のひとつが、「好転反応はいつ始まって、いつ終わるのか?」という点です。
治療を始めたばかりの時期は、ニキビが増えたり赤みが強くなったりと、想像していた「治療のスタート」とは違う肌の変化に戸惑う人が少なくありません。
好転反応は必ず起こるものではありませんが、起こった場合でも多くは一時的なもので、期間や経過には一定の傾向があります。
ここでは、好転反応が出やすい時期・ピーク・落ち着くタイミングをわかりやすく整理して解説します。
治療を継続すべきか迷ってしまう方も、まずはこの期間の見通しを知ることで安心につながるはずです。
開始時期(いつから?)
服用開始から1〜3週間以内に好転反応が出るケースが最も多いとされています。
一部の人では3〜4週間目に出始める場合もあります。
東京皮膚科形成外科などの臨床報告によると、「服用1〜2週間後に一時的な悪化が見られ、数週間で落ち着くケースが多い」とされています。
収束時期(いつまで?)
一般的な経過は以下のように推移します。
| 時期 | 肌の変化 |
| 1〜2週間 | ニキビが増える/赤み・乾燥が強く出る |
| 3〜4週間 | 悪化のピークを迎える人が多い |
| 5〜8週間(1〜2カ月) | 徐々に炎症が落ち着き、新しいニキビの発生が減る |
| 2カ月以降 | 好転反応は治まり、安定期に入る |
おおよそ、「1〜2カ月で落ち着く」と説明されています。
つまり、2カ月を過ぎても悪化が続く場合は、単なる好転反応ではなく「用量過多・副作用・別疾患(酒さ様皮膚炎など)」の可能性があるため、医師に相談が必要です。
好転反応が長いと感じたら見直すべきポイント
イソトレチノインの好転反応は、多くの場合1〜2カ月以内で落ち着くと報告されています。
そのため、悪化が長引いているように感じたら、治療の進め方や生活習慣を一度見直すことが大切です。
特に「2カ月を過ぎても改善が見られない」「悪化が続いている」という場合は、単なる好転反応ではなく、用量過多やスキンケア刺激、別の皮膚疾患が影響している可能性があります。
以下では、長引くときに見直すべき3つのポイントをまとめました。

①服用量(用量)が適切かどうか
イソトレチノインは「体重あたりのmg数」で効果が決まる薬ですが、開始量が高すぎると皮膚のバランスが急激に変化し、初期悪化が長引くことがあります。
・0.5〜1mg/kg 前後の高用量スタート
・皮脂の減り方が急激で、炎症が追いついていない
・乾燥によるバリア低下で炎症が悪化している
こうしたケースでは、医師が一時的な減量や休薬、低用量への切り替えを提案することがあります。
自己判断で中断するのではなく、「現在の量が適切か」を主治医に必ず確認しましょう。
②スキンケアが刺激になっていないか
好転反応が長引く理由の多くは、「治療による乾燥+スキンケアの刺激」が重なることです。
特に以下のアイテムは悪化要因になりやすいため注意が必要です。
・AHA/BHA、ピーリング化粧水
・レチノール・ビタミンA配合美容液
・スクラブ・ゴマージュ
・アルコール入り化粧品
・洗浄力の強いクレンジングや洗顔料
イソトレチノイン中は皮脂が極端に減るため、肌が普段より弱っている状態です。
刺激となるアイテムは避け、低刺激・高保湿のスキンケア(セラミド・ヒアルロン酸など)を中心に肌を保護しましょう。
③他の皮膚炎や疾患が隠れていないか
2カ月以上悪化が続く場合、次のような別の皮膚トラブルが重なっていることがあります。
・酒さ様皮膚炎
・接触性皮膚炎(化粧品かぶれ)
・バリア機能低下による慢性炎症
・マスク摩擦や紫外線による刺激性皮膚炎
特に、顔全体の赤み・ヒリヒリ感・ほてり・痛みが続く場合は、好転反応ではなく治療が合っていないサインである可能性が高いため、必ず医師の診察を受けてください。
④生活習慣が回復を妨げていないか
イソトレチノインは体内の脂質代謝にも影響するため、生活習慣も肌の回復速度に影響します。
・睡眠不足
・糖質・脂質の多い食事
・ストレス
・不規則な生活
・アルコール習慣
これらは炎症を長引かせ、治療効果の妨げになることがあるため、改善できる部分は見直しましょう。
好転反応を乗り越えるための正しい対処法
イソトレチノインの好転反応は、一時的なものとは分かっていても、実際に赤みやニキビの増加、乾燥などの症状が続くと不安になってしまうものです。
しかし、正しいケアと対処法を知っておくことで、このつらい初期段階を大幅に軽減し、治療効果を最大限に引き出すことができます。
ここでは、「好転反応を乗り越えるための具体的なケア方法」を分かりやすくまとめました。
保湿ケアを徹底する
イソトレチノインは皮脂を強力に抑えるため、乾燥が悪化すると肌のバリア機能が低下します。
ワセリン・セラミド・ヒアルロン酸配合の保湿剤を使用し、乾燥→炎症悪化の悪循環を防ぐことが大切です。
洗顔は1日2回まで
過度な洗顔は皮脂を取りすぎてバリアを壊します。
泡立てた洗顔料でやさしく短時間で洗い、ぬるま湯で流すのが基本です。
紫外線対策
治療中は皮膚が敏感になり、紫外線刺激で炎症が悪化することも。
ノンケミカルの日焼け止めを毎日使用し、外出時は帽子や日傘で保護します。
食生活・睡眠も大切
糖分・脂質の多い食事は皮脂分泌を促進します。
野菜・魚・発酵食品を意識し、睡眠を十分にとりましょう。
生活習慣も炎症の回復に直結します。
我慢せず医師に相談
「好転反応だから」と自己判断で放置するのは危険です。
特に以下のような場合は、すぐに医師へ連絡してください。
・2カ月以上悪化が続く
・痛み・腫れ・膿を伴う
・顔全体に赤みが広がる
・乾燥やヒリヒリでスキンケアすらできない
好転反応と副作用の違い
混同しやすいポイントですが、「好転反応」は一時的な治療反応、「副作用」は体質や用量に対する過剰反応です。
| 区分 | 好転反応 | 副作用 |
| 原因 | 皮脂排出・炎症反応 | 薬の作用過多・体質 |
| 発生時期 | 1〜4週間以内に出て徐々に改善 | 長期化・悪化する |
| 対応 | 保湿・経過観察 | 医師判断で減量・中止もあり |
| 代表症状 | ニキビ増加・赤み | 強い乾燥・唇のひび割れ・肝機能異常など |
2ヶ月を乗り越えた先に見える効果
多くの人で2カ月を過ぎるころには新しいニキビの発生が減り、肌が滑らかになってくると報告されています。
また、3〜4カ月目以降では「毛穴が小さくなった」「皮脂が減って化粧崩れがしにくくなった」といった変化も実感しやすくなります。
イソトレチノインは効果が高い一方、初期の反応に心理的ストレスを感じやすい治療です。
しかし、好転反応の時期を正しく理解して乗り越えることが、最終的な治療成功への鍵となります。
イソトレチノインの症例写真(治療前⇨治療開始6カ月後)

※注意事項:治療の結果には個人差があります。
まとめ
イソトレチノインの好転反応は、多くの方が経験する可能性のある一時的な変化です。
開始後1〜2週間で症状が出始め、長くても1〜2カ月ほどで落ち着くケースが一般的とされています。
一方で、悪化が長く続いてしまうと「本当に続けていいのか」「治療が合っていないのでは?」と不安になりがちです。
しかし大切なのは、好転反応の仕組みと期間を理解した上で、正しいケアをしながら治療を継続すること。
保湿や紫外線対策などの日常ケアを丁寧に行い、刺激を避けながら肌バリアを守ることで、反応のつらさは大幅に和らぎます。
そして、2カ月を過ぎても強い悪化が続く場合や、生活に支障が出るほどの症状がある場合は、自己判断せず早めに医師へ相談しましょう。
イソトレチノインは、適切に使えば大きな改善が期待できる治療です。
焦らず、正しい知識とサポートを得ながら進めることで、ニキビの悩みから解放され、健やかな肌へと着実に近づいていきます。
イソトレチノインの処方や相談は、お気軽にプライベートスキンクリニックへご相談ください。
参考文献
[1]Isotretinoin: The truth about safety, side effects, and skin care
https://www.aad.org/public/diseases/acne/derm-treat/isotretinoin/side-effects/
[2]Challenges and Solutions in Oral Isotretinoin in Acne: Reflections on 35 Years of Experience
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6951028/
よくあるご質問
患者様からよくいただく質問をご紹介します。
イソトレチノインが効かない人はいますか?
はい。ただし「効かない理由」があることがほとんどです。
よくある原因は、①用量や内服期間が少なすぎる(例:10mgを短期間で中止)、②ニキビではなく酒さ(酒さ様皮膚炎)の可能性、③スキンケア刺激で炎症が悪化している、④ホルモンバランスの影響などが考えられます。
特に「酒さ」はニキビと誤解されやすく、イソトレチノインでは改善しないことがあります。
改善しないときは、顔の赤みやほてり、毛細血管の目立ちなどがないかを医師と確認しましょう。
イソトレチノインで酒さは悪化しますか?
酒さ(酒さ様皮膚炎)の方は悪化する可能性があります。
イソトレチノインはニキビ治療薬であり、酒さには必ずしも適応ではありません。
むしろ、顔全体の赤み・ほてり・刺激感が強い場合は、酒さや、酒さ様皮膚炎(ステロイド外用などが原因)の可能性があるため、治療方針が変わります。
赤みが続く場合は「酒さの可能性」を医師に必ず確認しましょう。
イソトレチノインはどのくらいの量(用量)を飲むのが一般的ですか?
体重1kgあたり0.25〜0.5mgが一般的な開始量です。
重症例では1mg/kgまで使用されることもありますが、副作用が増えるため慎重に調整します。
診療時間
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資格
- 一般社団法人日本形成外科学会 形成外科専門医
- 特定非営利活動法人日本レーザー医学会 認定医
- 一般社団法人国際抗老化再生医療学会 正会員
- 一般社団法人 日本美容外科学会 JSAPS(Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery)正会員
- 一般社団法人日本美容皮膚科学会(Japanese Society of Aesthetic Dermatology)正会員
- 一般社団法人日本頭蓋顎顔面外科学会 正会員
- アラガン社 VST(ボトックスビスタ)認定医
- アラガン社 ヒアルロン酸バイクロスシリーズ注入認定医
- Miramar Labs社(ミラドライ開発社)ミラドライ認定医
- ジュビダームビスタ®ボリューマXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボリフトXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボルベラXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボラックスXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボライトXC認定医
- ジュビダームビスタ®ウルトラXC/ウルトラプラスXC認定医
- ボトックスビスタ認定医
- レスチレン認定医
経歴
| 平成15年 | 大阪医科大学 形成外科教室:入局 |
|---|---|
| 平成21年 | 大阪医科大学 助教(准):就任 |
| 平成24年 | 医学博士学位取得 |
| 平成25年 | 某美容クリニック:院長就任 |
| 令和5年 | プライベートスキンクリニック |
学会発表
- 第48回 日本美容外科学会総会(2025年9月25日~26日)
- 顎のヒアルロン酸注入を用いた輪郭形成-248症例の治療経験
- 第43回 日本美容皮膚科学会総会・学術大会(2025年8月16日~17日)
- POTENZA®を用いた美肌・毛穴・ニキビ治療の臨床経験
- 第42回 日本美容皮膚科学会総会(2024年8月31日~9月10日)
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