アトピーで顔が赤い…その原因と治し方|慢性赤み・炎症に悩む方へ医師が解説
アトピー性皮膚炎はかゆみのイメージが強いのですが、顔が赤くなる(赤ら顔) という症状も非常に多く、しかもなかなか治りにくいという特徴があります。
顔は皮膚が薄く、刺激を受けやすい部位です。そのため、バリア機能が弱っているアトピー肌では、ほんの少しの刺激でも赤み・ほてり・かゆみが強く出てしまいます。
さらに、掻いてしまったり、乾燥が続いたり、ステロイド外用薬の長期使用などが重なることで、赤みが慢性化し、常に顔が赤く見えてしまう方も少なくありません。
この記事では、アトピーで顔が赤くなる本当の理由や正しいセルフケア方法、アトピーによる顔の赤みの先進治療についても、医師の視点から丁寧に解説していきます。
「顔の赤みが気になる…」「いつも頬や鼻周りがヒリヒリしている」そう感じている方にとって、必ずヒントになる内容です。ぜひ最後までご覧ください。
この記事の要約
▶アトピーで顔が赤くなる原因は、慢性炎症・バリア機能の低下・掻きむしり・ステロイド副作用など複数の要因が重なるため。
▶赤みは自宅ケアだけでは改善しにくく、保湿・刺激回避・生活習慣の見直しが必須。
▶皮膚科では、ステロイドやタクロリムス、JAK阻害薬、生物学的製剤など症状に合わせた治療が行われる。
▶長引く赤みや再発を繰り返す方には、炎症を鎮めつつ肌の再生を促すACRS療法が有力な選択肢。

目次
アトピーによる顔の赤みの正体と複合的な原因
アトピー性皮膚炎による「顔の赤み(赤ら顔)」は、ひとつの原因ではなく、炎症・乾燥・刺激・血管の変化・薬の影響など、複数の要因が絡み合って起こります。
特に顔は皮膚が薄く、外部刺激を受けやすい部位であるため、アトピーの悪化サインがもっとも目立ちやすい場所でもあります。
1. 慢性的な炎症とバリア機能の低下
アトピー性皮膚炎の根本には、皮膚のバリア機能低下があります。
皮膚のバリアが弱くなると、
・アレルゲン(ホコリ・花粉・ダニ)
・乾燥
・摩擦
・汗
といった日常のささいな刺激でさえ、炎症を引き起こしやすい状態になります。
顔は皮膚が薄く「赤みが出やすい部位」
顔は体の中でも特に皮膚が薄く、外部刺激を受けやすいため、アトピーによる炎症や赤みがもっとも目立ちやすい場所です。
バリア機能低下 → 乾燥 → 赤み → ゴワつきへ進行
乾燥が進むと、
- カサカサした赤み
- ピリピリした刺激感
- 強い紅斑(真っ赤な状態)
- ゴワゴワした皮膚(苔癬化)
へ進行することがあります。炎症と乾燥を繰り返すことで、顔の赤みは慢性化しやすくなります。
2. 「掻きむしり」による刺激と悪循環
アトピーのもっとも辛い症状のひとつが「かゆみ」です。
つい掻きたくなるのは当然ですが、この掻く行為こそが赤みを悪化させる重要な要因です。
掻く → バリア破壊 → 炎症悪化の悪循環
掻くと皮膚の表面に微細な傷がつき、バリア機能はさらに低下します。その結果、炎症が悪化し、赤み・ヒリつき・ほてりが強くなります。
掻き壊し → 細菌感染のリスク
掻きむしった傷から細菌が入り込み、「とびひ」「二次感染」を引き起こすこともあります。
炎症が長引くと毛細血管が開きっぱなしに
炎症が慢性化すると、毛細血管が拡張したままになり、皮膚の薄い顔ではその血管が透けて見え、赤ら顔が固定化することがあります。
「掻くほど赤みが増す」「治ってもまた赤くなる」という方は、この悪循環が起きている可能性が高いです。
3. ステロイド外用薬の副作用による赤み
ステロイド外用薬はアトピー治療の中心となる大切な薬ですが、強い薬を長期間、自己判断で使い続けると副作用が出ることがあります。
ステロイド長期使用で起きやすい変化
- 皮膚が薄くなる(菲薄化)
- 血管が目立つ(毛細血管拡張)
- 赤みが常に残る
皮膚が薄くなると、もともと顔に張り巡らされている血管が透けて見え、より赤みが強く見えるようになります。
必ず「医師の指示のもと」で使うことが重要
ステロイドは正しく使えば安全です。しかし、自己判断で使い続けたり、強さを誤ったりすると、赤みを悪化させる原因になります。顔は特に薬の強さ選びが重要なため、医師の管理が必要です。
4. 炎症後に残る色素沈着(茶色っぽい赤み)
炎症が治まっても、茶色っぽい赤み(赤黒さ)が残る場合があります。
これは、炎症の影響で皮膚がメラニンを作りすぎ、その色素が表皮内に残ってしまうことで起こる「炎症後色素沈着(PIH)」です。
長引く炎症=色素沈着の原因
アトピーで炎症が繰り返されると、赤みだけでなく茶色く沈着した赤みとして残ることがあります。
メイクでも隠れにくい、くすんだような赤黒さが気になる方は、この色素沈着が関係している可能性があります。
顔の赤みを悪化させないセルフケアと応急処置
アトピーによる顔の赤みをセルフケアだけで完全に治すのは現実的には難しいですが、悪化を防ぐ・肌を落ち着かせるためには、毎日のケアがとても重要です。
ここでは、医師の立場から「これだけは押さえておきたい基本」をお伝えします。
刺激を避ける正しいスキンケアの基本

刺激の少ない洗顔料を選ぶ
洗浄力の強い洗顔料は、アトピー肌には負担が大きく、赤みを悪化させます。
泡で洗うだけで落ちるような敏感肌用の洗浄料がおすすめです。
摩擦をなくす
・ゴシゴシ洗わない
・タオルでこすらない
・コットンの使用は最小限に
皮膚への摩擦はアトピー肌の大敵です。
ぬるま湯(32〜34℃)を徹底
熱いお湯は皮脂を奪い、バリア機能を落とします。「ぬるいかな?」くらいが肌には最適です。
乾燥対策(保湿)は治療の土台
アトピー治療の基本は「炎症を抑えること」と「保湿」です。中でも保湿は、赤みを悪化させないための一番の予防策といえます。
入浴後5分以内の保湿
肌がもっとも乾燥しやすいのはお風呂上がりから数分間。
ここで保湿剤を塗れるかどうかが、赤み悪化を大きく左右します。
セラミドを中心とした保湿剤がおすすめ
・セラミド
・ヘパリン類似物質
・ワセリン
これらはバリア機能の回復を助ける代表的な成分です。
かゆみを緩和する応急処置と摩擦対策
冷やすことで赤み・かゆみを一時的に落ち着かせる
清潔なタオルでくるんだ保冷剤を優しく当てるだけでも、炎症は一時的に落ち着きます。
無意識の掻き壊しを防ぐ
・爪を短く切る
・綿の手袋をして寝る
夜間の掻き壊しは赤み悪化の最大原因の一つです。
生活習慣と食生活による体質改善

睡眠
“肌の回復ホルモン”は寝ている間に分泌されます。
特に睡眠直後3時間の質を大切にしましょう。
食事
・たんぱく質
・ビタミンB群
・抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸(えごま油・アマニ油)
これらは肌の修復を助けます。
ストレス管理
アトピーにおいてストレスは、炎症悪化のスイッチのような存在です。
軽い運動や深呼吸でも、赤みのコントロールにつながります。
皮膚科・クリニックで行う専門的な治療法
アトピーによる顔の赤みは、セルフケアだけでは限界がある医療介入が必要な症状と言えます。
大人のアトピーはとくに、慢性化しやすく「炎症が抜けきらない」状態が続きます。だからこそ、専門医による治療がとても重要になります。
炎症を抑える薬物療法(保険診療)
ステロイド外用薬
急性の強い赤み・かゆみには欠かせない薬です。顔には必ず弱めのものを使用します。
非ステロイド外用薬
・タクロリムス軟膏(プロトピック)
・デルゴシチニブ軟膏(JAK阻害薬)
・ジファミラスト(PDE4阻害剤)
長期的な赤みケアには、これらの薬が非常に役立ちます。
内服薬
抗ヒスタミン薬はかゆみを減らし、掻き壊しを防ぎます。重症例では、内服のJAK阻害薬も選択肢になります。
慢性炎症・肌質改善に有効なACRS療法【当クリニック推奨】
私がアトピー患者さんを診てきて、今いちばん伝えたいのが 「炎症そのものを落ち着かせる治療の重要性」 です。
そして、その中でとても相性が良いと感じているのが ACRS療法 です。
治療を繰り返す「慢性的な赤み」の根本原因
アトピーによる顔の赤みが長引くのは、単に炎症が強い、というだけではありません。
✔ バリア機能の低下
✔ 長年の炎症で弱った皮膚
✔ ステロイド長期使用で薄くなった皮膚
✔ 毛細血管が開きっぱなし
つまり、赤みが出やすい肌質に変わってしまっていることが多いのです。
これを「薬を塗り続けるだけ」で解決するのは正直難しいのが現状です。
【ACRS療法】炎症を抑え、肌を再生させる新しい治療
ACRS(Autologous Cytokine Rich Serum)療法は、自分の血液から取り出した血清を特殊加工し、抗炎症性サイトカインと成長因子を高濃度に含んだ自己治癒血清を作る治療です。簡単に言うと、
「炎症を静かに落ち着かせながらバランスを整え、肌を再生させる」
そんな治療です。
―Doctor’s Comment―
アトピーの赤み治療は、「活性させる治療」よりもまず炎症を落ち着かせることが何より重要です。
ACRSはその抗炎症の部分で優れており、肌を刺激せず、むしろバランスを整えていく方向に導ける治療です。
長年炎症が続いていた方こそ、違いを感じやすい印象があります。

ACRSがアトピー性赤ら顔に向く理由
① 慢性炎症の鎮静
炎症の原因となるサイトカイン(IL-1、TNF-α など)を抑え、肌を「戦闘モード」から「回復モード」へ切り替えます。
② 皮膚の再生力を高める
長期の炎症で弱った皮膚に必要な
・成長因子
・保湿保持構造の回復
・角層の修復
をサポートします。
③ バリア機能が戻りやすくなる
「乾燥しにくい・刺激に強い肌」へ近づけることで、赤みの再発を減らします。
④ 顔の薄い皮膚にも安全に使いやすい
自己血由来のため、アレルギー反応が出にくく、敏感な顔にも施術しやすいのが大きな利点です。
ACRS療法の施術の流れ
ACRS療法は難しい治療に見えますが、実際の流れはとてもシンプルです。
1.採血(約12ml)
患者様ご自身の血液を採り、血清づくりの準備をします。
2.血清の加工(インキュベーション:3時間)
血液を専用の容器で温め、
抗炎症性サイトカインを増やす工程 を行います。
3.血液を遠心分離してACRS血清を抽出
不要な成分を取り除き、
「炎症を抑える力」と「再生力」を高めた血清だけを取り出します。
4.肌へ注入
・医師が細かく注射する手打ち
・機械で均一に細かく注入する方法
の2種類から、症状や目的に応じて適切な方法を選びます。
施術自体は20〜30分程度で、ダウンタイムは少なく、赤みのある方でも比較的受けやすい施術です。
ACRS療法はどんな人に向いている?
ACRSが特に相性が良いと感じるのはこんな方です。
✔ 顔の赤みがずっと治らない
ステロイド・保湿・光線療法を続けても赤みが改善しない方。
✔ 炎症と乾燥を両方抱えている
「乾燥 → 炎症 → 赤み → また乾燥」という悪循環に陥っている方。
✔ ステロイドを減らしたい
急にやめる必要はありませんが、炎症が落ち着くことで徐々に減らせる状態をつくることができます。
✔ 顔の皮膚が薄く、薬の刺激が辛い
頬・目元・口周りなど、弱い薬でも刺激が出やすい方。
✔ 再発を繰り返し、肌質そのものを立て直したい
ACRSは炎症を抑えるだけでなく肌の再生も促すため、「再発を減らす」という意味で特に向いています。
✔ アトピーが悪化する時期が決まっている
季節の変わり目・疲れが溜まった時など、いつも悪くなるタイミングがある場合の予防にも相性が良いです。
まとめ|アトピーによる顔の赤みは、適切なケアで改善を目指せます

アトピーの赤ら顔は、
・バリア機能の低下
・慢性的な炎症
・掻きむしりの悪循環
・ステロイドの副作用
など複数の原因が複雑に絡み合っています。
そのため、「保湿だけ」「薬だけ」では限界が出てしまうことがあります。
だからこそ、炎症を落ち着かせ、肌の再生力を引き上げる治療が必要です。
ACRS療法は、
・慢性炎症の鎮静
・皮膚の再生
・バリア機能の回復
を同時に目指せるため、従来の治療だけでは改善が不十分だった方にこそ強い味方になる と感じています。
赤みや炎症が続くと、日常生活にも大きなストレスがあります。一人で悩まず、ぜひ専門医にご相談ください。
あなたの肌の状態・生活背景・お悩みに合わせて、最適な治療プランをご提案いたします。
参考文献
Atopic dermatitis – The Lancet Seminar (Guttman-Yassky E 他, The Lancet, 2025) — アトピー性皮膚炎の最新の病態・治療動向をまとめた総説。ランセット
Updates in atopic dermatitis for the primary care physician (2024) — 成人期アトピーを含むアトピー全般を一般医向けに整理。サイエンスダイレクト
Japanese guidelines for atopic dermatitis 2020 (アレルギー学会 / 日本皮膚科学会, 2020) — 日本国内の診断基準・治療指針を提示。サイエンスダイレクト+1
A systematic review and meta‑analysis of the prevalence and characteristics of adult‑onset atopic dermatitis (2018) — 成人発症アトピーの頻度・特徴を分析。サイエンスダイレクト
Facial and neck erythema associated with dupilumab for atopic dermatitis: a systematic review (2021) — 顔・首の赤みに関するアトピー治療中の文献。サイエンスダイレクト
A systematic review of atopic dermatitis: The intriguing pathophysiology and novel treatments (2023) — 病態と新規治療にフォーカスした系統的レビュー。MDPI
Systemic treatments for atopic dermatitis (eczema): benefits and harms (2023) — 成人アトピー治療(全身療法含む)を比較検討したレビュー
よくあるご質問
患者様からよくいただく質問をご紹介します。
アトピーで顔がずっと赤いのは治りますか?
多くの場合、適切な治療で赤みのコントロールが可能です。炎症を抑える薬に加え、バリア機能を高めるスキンケアや生活改善が重要です。慢性化した赤みには、炎症と再生の両方にアプローチする治療が有効です。
ステロイドを使うと赤みが悪化することがありますか?
正しく使えば安全ですが、長期間・強い薬を使い続けると、皮膚の菲薄化や毛細血管拡張が起こり赤みが目立つことがあります。医師の指示のもと適切に使用することが大切です。
ACRS療法はアトピーでも安全ですか?
はい。自己血液由来の成分を使用するためアレルギーリスクが少なく、刺激の出やすい顔にも施術が可能です。ただし、炎症が強い急性期はまず外用薬で落ち着かせる必要があります。
ACRSはどのくらいで効果が出ますか?
個人差はありますが、1〜2回の施術で赤みの減少や肌の落ち着きを感じる方が多いです。慢性炎症が長い場合は、3〜6回を目安に継続すると肌質が安定しやすくなります。
顔の赤みは美容医療でも治せますか?
アトピーが原因の場合、美容施術だけでは不十分です。まず炎症を抑え、肌のバリアを整えることが大前提です。症状が落ち着いた後に、IPLやポテンツァなどで赤みを改善することは可能です。
診療時間
[ 完全予約制 ] 10:30〜19:00
土日診療あり
| 美容外科・ 美容皮膚科 |
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資格
- 一般社団法人日本形成外科学会 形成外科専門医
- 特定非営利活動法人日本レーザー医学会 認定医
- 一般社団法人国際抗老化再生医療学会 正会員
- 一般社団法人 日本美容外科学会 JSAPS(Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery)正会員
- 一般社団法人日本美容皮膚科学会(Japanese Society of Aesthetic Dermatology)正会員
- 一般社団法人日本頭蓋顎顔面外科学会 正会員
- アラガン社 VST(ボトックスビスタ)認定医
- アラガン社 ヒアルロン酸バイクロスシリーズ注入認定医
- Miramar Labs社(ミラドライ開発社)ミラドライ認定医
- ジュビダームビスタ®ボリューマXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボリフトXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボルベラXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボラックスXC認定医
- ジュビダームビスタ®ボライトXC認定医
- ジュビダームビスタ®ウルトラXC/ウルトラプラスXC認定医
- ボトックスビスタ認定医
- レスチレン認定医
経歴
| 平成15年 | 大阪医科大学 形成外科教室:入局 |
|---|---|
| 平成21年 | 大阪医科大学 助教(准):就任 |
| 平成24年 | 医学博士学位取得 |
| 平成25年 | 某美容クリニック:院長就任 |
| 令和5年 | プライベートスキンクリニック |
学会発表
- 第48回 日本美容外科学会総会(2025年9月25日~26日)
- 顎のヒアルロン酸注入を用いた輪郭形成-248症例の治療経験
- 第43回 日本美容皮膚科学会総会・学術大会(2025年8月16日~17日)
- POTENZA®を用いた美肌・毛穴・ニキビ治療の臨床経験
- 第42回 日本美容皮膚科学会総会(2024年8月31日~9月10日)
- PRPを用いた複合治療におけるざ瘡後瘢痕と毛穴開きの治療の当クリニックでの経験について
- 第67回 日本形成外科学会総会・学術集会(2024年4月10日~12日)
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